「かはたれ」は美しくて、寂しい、悲しい、物語だった。
再生と同時に、別れの物語でもあったからだろう。
傷ついた心はまだ完全には癒されていなかった。
自分の力で立ち上がるのはこれから先のお話、そう言う終わり方だったからだ。

「たそかれ」は美しくてあたたかな物語だ。

小学生だった麻は、中学生になった。
自分の見ているものに対する不安が無くなり、揺らがなくなった。

その揺らがなさ、芯のある感じが物語をあたたかくする。
麻の成長に、読む側の心も穏やかになる。

不知は美しい河童である。
賢く、美しく、孤独だ。
不知は待っている。
60年前に別れた、司を。
たったひとり、ずっと待っている。

「かわたれ」での麻は、自分のために物語を終結させる必要があった。
揺らがない中学生の麻は、不知のために、八寸のために、動く。
その違いがこんなにも物語への印象を変える。

別れは悲しい。
一生の別れ、
もう二度と会えないのだと知りながらも告げなくてはならない別れ、
八寸と麻の、
不知と司の、
そして年老いた犬と八寸の、
それぞれの別れの模様にぼろぼろと涙を流しながら読み終えた。

こんなにも胸を打つ、寂しさとわかれとあたたかな心を書いた本を、他に知らない。

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