「くまって、いいにおい」

くまっていいにおい。

いいにおいだから、悲しいことがあるとみんな、くまのにおいをかぎにくる。
小さいねずみはくまの胸の辺りで丸まって、ふかふかの毛皮の匂いをかいで、うっとりと

「くまっていいにおい…」

とつぶやく。

おひさまのにおいのような、
あたたかい日向のような、
ほっとして、うっとりする、
いいにおい。

でもくまは、夜中じゅう泣き通しのイタチの親子に睡眠を邪魔されたり、１人でゆっくりしたい時に１人になれなかったりして、自分のにおいをかぎにこられるのはやだなと思ってる。
だって自分じゃ自分のにおいなんてわかんないし。
ちっともいいにおいだと思わないし。

そしたら、きつねがくまににおいを消す「ニオイトール」をくれた。
きつねが発明したもの。
だってきつねは「きつね博士」って呼んでほしいのに、だれも呼んでくれないし、みんなくまのところへ行っちゃうから、そんなにおいなんて無くなれば、みんなが自分のほうへ来るだろうって考えたから。

しっぱいばっかりのきつねの発明は、今度ばかりは成功で、ほんとうにくまのにおいは消えてしまった。

においの消えてしまったくま。
くまのにおいを消してしまったきつね。

くまのにおいが大好きだった、ふくろうやへびやいたちやねずみたち。

においが無くなったくまは、最初はすごくせいせいする。
だけど、

くまって、いいにおいじゃなくなったら、みんなが好きなくまじゃなくなるの？
くまはこれからどうなるの？



しみじみと、かわいくて、いいお話です。
タイトルがすごくいいなーと思う。
夫でも、こどもたちでもいいから、だっこして、くんかくんかとにおいをかいで、
「夫って（はー子って　ひよ子って）いいにおい」
って言いたくなるような、そんなおはなし。