この絵本にはノックアウトされました。

オリンちゃん(…どう言うアクセントで読めばいいのか)が、ベッドで寝ているひいおばあちゃんのところに、たった一個しかならなかった姫リンゴを持っていきます。
毎年たくさんなるのに、ことしはいっこしか持ってこなかった。
どうしたの? と聞くおばあちゃんに、オリンちゃんがいろいろ考えます。

あのね、かわいいこがちょうだいって言うから、ちょっとだけあげちゃったの。
あのね、いじわるな子がちょうだいって言うから、ちょっとだけあげちゃったの。
あのね、知らない子がいたから、仲良くなりたくてちょっとだけあげちゃったの。

その理由を聞くたびに、おばあちゃんは、どうりで、と言います。

どうりで。このあいだ、かわいいこがきたの。いっしょにかいものしたのよ。
どうりで。このあいだ、いじわるなこがきたの。いっしょににわのおていれしたのよ。
どうりで。このあいだ、しらないこがきて、いっしょにみなみのくにへいったの。たのしかった。

おばあちゃんがベッドの上で思っていたのだろう、ささやかな日常のあれこれを、オリンちゃんとの空想の中でかなえる。
ほんとうにささやかなことなのよ。それがとても切ない。
ひいおばあちゃんと、オリンちゃんのお互いの優しさと愛情とに、もう読むたびにやられます。

派手ではないけれど、滋味あふれる、切り干し大根の煮付けのような、すごくすごくいい絵本だと思います。

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