「1995年のスモーク・オン・ザ・ウォーター」

13年前って、こうだったっけ。

阪神大震災が起きて、オウムがあの口に出すのもはばかられるような悲惨な事件を起こした年は、まだ携帯電話を持っている人は珍しく、何かを録音するのは、テープだったっけ。

1995年、高校受験に失敗した15歳の息子を抱えた、専業主婦井口美江子44歳。
パートに出て働くうち、ひょんな流れから（と言うより巻き込まれるように）、バンドをやることになった。
幼なじみと、パート先の元酒屋だったコンビニで出会った30代の女と、募集してやってきた46歳の女。
おばさんだけのバンドで、ディープパープルの、スモーク・オン・ザ・ウォーターを。

知らなかったけど、作者の五十嵐貴久は、「交渉人」とか「パパとムスメの7日間」を書いた人なのね。

いや私が今年で40代に突入とかね、主人公と年が多少近いので、なんとなく感情移入しやすく、なおかつ身につまされたりね。
なんて言うか、どうして男の人がこんなに主婦の感情をわかるんだろう、と最初気味悪かったw
書いたのは今現在40代女性か、と表紙の名前を確認して、「男か！」とびっくりしたですよ。
高校受験に失敗して浪人生活を送っている息子に対して、言い過ぎないよう、刺激しないよう、気を遣う部分はなんともリアルでちょっとコワかった。

お話は、もちろん安心して読めます。
そしてとても楽しい。
ライブ会場での緊張感、ステージに上がってからの頭が真っ白になる感じ、そしてグルーブ感、私には経験したことのない感情だけど、なんだかわかる、と思った。

ISBN:4575235911 単行本 五十嵐 貴久 双葉社 2007/10 ￥1，680