藩医 宮坂涼庵

2007年5月27日 読書
みちのくの、寒村の庄屋に嫁した「ゆみえ」と、秋川藩医涼庵の事件簿…でもないか。ものがたり、である。

寒村であるから、冷夏の年には飢饉が心配される。
飢饉の死亡者の中には子供の数は含まれないのだそうだ。
飢饉でも生き延びられるために、食べられるものをなんとかして食べる。
ドングリで餅を作られるうちはまだいい、最後の最後には、わらを、叩いて蒸して、叩いて蒸して、「わら餅」として口にするのだ。
でんぷん質のない藁は、一時の満腹感しか生まず、しかし、飢餓感ともう食べるものがないと言う絶望から命を絶つ者が出てくるほどの中で、藁ででも「手を加えれば食べる物がまだある」と言う安心感に繋がるのだと言う。

根底を流れるのは、この、寒村の飢饉と飢餓感への恐怖だ。
それに、私腹を肥やす権力者との戦い。
まっすぐな心根のゆみえと、涼庵、ゆみえの父や義理の息子、嫁とが絡み、救いと救われなさが同居する時代物語である。

ISBN:4406031618 単行本 和田 はつ子 新日本出版社 2005/02 ¥1,890

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年6月  >>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293012345

お気に入り日記の更新

この日記について

日記内を検索