素子の読書あらかると
2007年3月17日 読書
書評ではない、「読書エッセイ」だそうだ。
そしてその通り、本を読むことをとても楽しいと思っているその気持ちがそのまま伝わってくる。
そうだよね、本読むのって楽しいよね! と、読みながら共感してしまった。
絶対に借りよう、と思った本が何冊か。作者の名前も知らなかったので、とてもありがたい。
それから、本の中のおいしいものへの愛情。
変な表現だけども、こうとしか書けない。
私は小さい頃とても偏食で、肉はひき肉と鶏の唐揚げ以外全滅、キノコもダメ、魚も煮魚が苦手、刺身も食べられない。母はとっても苦労したと思う。
私自身、おいしいなあと思いながら食事をしたいと言う欲求があったのだろう、本の中の、食べ物の描写が大好きな子供だった。
一番覚えているのは小学校の頃読んだ「みにくいおひめさま」と言う本。
あるところに、性格も悪く顔もかわいくないお姫様がいた。
隣の国の王子様が来ても、お姫様を嫌がってアヒル番の娘のところへ行ってしまう。
ある時、その姫が、娘が三人いる婦人のところへ預けられることになった。
婦人が、「私のところにお姫様を預けてくだされば、お姫様を生まれ変わらせてさしあげます」と言ったからだ。
家は貧しいが、母と娘たちは心と力を合わせて、生活を楽しく美しいものにしている。
最初は不平たらたらだったお姫様が、娘たちのやることを見、自分がやらなければ誰もやってくれないことに気が付いて、ハンカチにアイロンをかける(この辺り記憶があやふや。違うことだったかもしれない)
その時、お姫様の顔がきらきらと輝き、つんと上を向いていた鼻が、かわいらしい鼻になった。
この後、またお姫様が何かをして(記憶が曖昧)、唇が赤く色づき、口の端が上に向かい、愛らしい口元になった。
最後はお姫様が夜中、自分一人で見よう見まね、マフィンを作った。
それは金色にこんがりと焼け、とてもおいしそう。
その時、お姫様の瞳はきらきらと星が輝くような光をたたえた。
すっかり美しく、控えめで、自分で身の回りのものを整えたり、お菓子を作ったりする喜びを知った姫は、王様が迎えによこした馬車に乗ってお城に戻る。
美しい姫をみて、王様もお妃様も大喜び。
隣の国の王子様は、もうアヒル番の娘のところへ行こうとはしなかった。
婦人は王様からたっぷりと褒美をもらい、めでたしめでたし。
と言う話である。
もう20年以上前に読んだ本なので、きれいになって行く顔の造作の順が違うかもしれないが、だいたいこんな感じの話だった。
いやー、何が印象に残ったかって、お姫様の作ったマフィンのおいしそうなこと!
その頃はマフィンなんてものは想像すら出来ず、クッキーでもパンでもなさそうな、でもおいしそうな、夜中にこっそりとオーブンから出されたバターの香りのする金色の食べ物、にうっとりと思いを馳せた。
王子の身勝手さや結局は良妻賢母をよしとする話であったのかもと思ったりすることもあるのだが、今でもその本の印象は強く私の中に残っているし、たぶんこれからも忘れることは無いだろう。
それくらい、おいしそうだった。
今読めば、どうしてこれだけの文章からそこまでの思い入れが出来たのかと思うような短さかもしれない。
それでも偏食の子供の、憧れが詰まった一冊だ。
そんなことを、「素子の読書あらかると」を読みながら思い出した。
この本の中で取り上げられている、「チョコレート戦争」、うん、好き好き。中からたっぷりとクリームがこぼれ落ちそうなエクレアとかね、本当においしそうだった。
そして、新井素子が、作家として本を読んでいる、のではなく、本当にただただ本が好きだから読んでいると言うのがとても素敵だ、と思う。
好きだから読んでる、自分が好きで、すごくいいと思うんだけど、お勧めするにはどうかなーだって私が好きな本があなたも好きかはわからないし、だから書評じゃなくて読書エッセイですよ、と言うスタンスで書かれた本なので、読んでいてとても楽しい。
ISBN:4122044723 文庫 新井 素子 中央公論新社 2005/01 ¥580
そしてその通り、本を読むことをとても楽しいと思っているその気持ちがそのまま伝わってくる。
そうだよね、本読むのって楽しいよね! と、読みながら共感してしまった。
絶対に借りよう、と思った本が何冊か。作者の名前も知らなかったので、とてもありがたい。
それから、本の中のおいしいものへの愛情。
変な表現だけども、こうとしか書けない。
私は小さい頃とても偏食で、肉はひき肉と鶏の唐揚げ以外全滅、キノコもダメ、魚も煮魚が苦手、刺身も食べられない。母はとっても苦労したと思う。
私自身、おいしいなあと思いながら食事をしたいと言う欲求があったのだろう、本の中の、食べ物の描写が大好きな子供だった。
一番覚えているのは小学校の頃読んだ「みにくいおひめさま」と言う本。
あるところに、性格も悪く顔もかわいくないお姫様がいた。
隣の国の王子様が来ても、お姫様を嫌がってアヒル番の娘のところへ行ってしまう。
ある時、その姫が、娘が三人いる婦人のところへ預けられることになった。
婦人が、「私のところにお姫様を預けてくだされば、お姫様を生まれ変わらせてさしあげます」と言ったからだ。
家は貧しいが、母と娘たちは心と力を合わせて、生活を楽しく美しいものにしている。
最初は不平たらたらだったお姫様が、娘たちのやることを見、自分がやらなければ誰もやってくれないことに気が付いて、ハンカチにアイロンをかける(この辺り記憶があやふや。違うことだったかもしれない)
その時、お姫様の顔がきらきらと輝き、つんと上を向いていた鼻が、かわいらしい鼻になった。
この後、またお姫様が何かをして(記憶が曖昧)、唇が赤く色づき、口の端が上に向かい、愛らしい口元になった。
最後はお姫様が夜中、自分一人で見よう見まね、マフィンを作った。
それは金色にこんがりと焼け、とてもおいしそう。
その時、お姫様の瞳はきらきらと星が輝くような光をたたえた。
すっかり美しく、控えめで、自分で身の回りのものを整えたり、お菓子を作ったりする喜びを知った姫は、王様が迎えによこした馬車に乗ってお城に戻る。
美しい姫をみて、王様もお妃様も大喜び。
隣の国の王子様は、もうアヒル番の娘のところへ行こうとはしなかった。
婦人は王様からたっぷりと褒美をもらい、めでたしめでたし。
と言う話である。
もう20年以上前に読んだ本なので、きれいになって行く顔の造作の順が違うかもしれないが、だいたいこんな感じの話だった。
いやー、何が印象に残ったかって、お姫様の作ったマフィンのおいしそうなこと!
その頃はマフィンなんてものは想像すら出来ず、クッキーでもパンでもなさそうな、でもおいしそうな、夜中にこっそりとオーブンから出されたバターの香りのする金色の食べ物、にうっとりと思いを馳せた。
王子の身勝手さや結局は良妻賢母をよしとする話であったのかもと思ったりすることもあるのだが、今でもその本の印象は強く私の中に残っているし、たぶんこれからも忘れることは無いだろう。
それくらい、おいしそうだった。
今読めば、どうしてこれだけの文章からそこまでの思い入れが出来たのかと思うような短さかもしれない。
それでも偏食の子供の、憧れが詰まった一冊だ。
そんなことを、「素子の読書あらかると」を読みながら思い出した。
この本の中で取り上げられている、「チョコレート戦争」、うん、好き好き。中からたっぷりとクリームがこぼれ落ちそうなエクレアとかね、本当においしそうだった。
そして、新井素子が、作家として本を読んでいる、のではなく、本当にただただ本が好きだから読んでいると言うのがとても素敵だ、と思う。
好きだから読んでる、自分が好きで、すごくいいと思うんだけど、お勧めするにはどうかなーだって私が好きな本があなたも好きかはわからないし、だから書評じゃなくて読書エッセイですよ、と言うスタンスで書かれた本なので、読んでいてとても楽しい。
ISBN:4122044723 文庫 新井 素子 中央公論新社 2005/01 ¥580
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