橋本治の理屈が結構好きだ、と読んで気がついた。
年末に20年前に買った「無果実少年と瓜売り小僧」を読み返してみて、これをまともに読んだのこれが初めてだなあとしみじみしてしまった。

携帯が無いのが当たり前、たぶん「携帯電話」なんていう概念すらなかった。
そう言うのはSFの世界にしかないものだったはずだ。
主人公が借りたアパートのトイレも水洗じゃないし、洗濯機は二層式がスタンダードだったんじゃないっけ。読みながら、今高校生の友達の子供が、まだ保育園にもいっていなかった頃のことを思い出した。
友人のアパートの匂いまで思い出したほどだ。

そんなこんなで、改めて橋本治の本を読んでみると、「考える」と言うことを恣意的に「考えて」、それを言葉に置き換える作業が上手な人なんだな、と思う。

ほんの数年前に書かれたことでも、あまりに変化が激しい世の中のせいか、内容が古いと思うこともない本ではあったけれども。

巻末の、「古事記」について書かれたところがいちばんおもしろかった。
「古事記」は「これから始まる」ではなく、「既に始まっていることについて書かれている話」である、と言う解釈。
創世記などはそれこそ「これから始まる」ものがたりであるだろうが、古事記は人間は既に生きている。生きて大地に根差していると言う柱が大前提で書かれた話である、と言う。
そこを読んで、ぞくぞくと感動してしまった。
何に感動したのかわからない。
わからないけれど、何度読み返しても、ぞくぞくと感動してしまう。

そう言う文章に出会えただけでも、この本を読んでよかった。

ISBN:4022500387 単行本 橋本 治 朝日新聞社 ¥1,470

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年6月  >>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293012345

お気に入り日記の更新

この日記について

日記内を検索